「元気なふり」を続けるコスト

12年前の私

12年前、私は「元気なふり」の達人でした。

しんどくても、笑顔で乗り切る。 不安でも、自信があるように見せる。 休みたくても、もう少し頑張る。

それが当たり前だと思っていました。 そうしないと、周りに迷惑がかかると思っていました。

元気なふりが当たり前になっていたら、双極性障害になっていました。

精神科で「就労禁止」と言われるまで、元気なふりをしていました。

就労禁止と言われたとき、ショックでした。 「自分は関係ない世界」だと思っていたことが、自分の身に起きている。

でも、同時に、もう一つの気持ちがあったんです。

「もう、ふりをしなくていいんだ」

そんな、ほっとした気持ち。

あのとき初めて、自分がどれだけ無理をしていたのか、気づきました。

振り返ると、体はずっとサインを出していたんだと思います。 でも、私はそのサインを無視し続けていた。

「元気なふり」を続けることで、本当の自分の状態が見えなくなっていたんです。


「社長は元気じゃないといけない」

経営者の方と話していると、12年前の自分と重なる瞬間があります。

社員の前では明るく振る舞う。 取引先には自信を持って話す。 家族には心配をかけないようにする。

それ自体は、悪いことじゃないと思います。

でも、ふと立ち止まって考えてみてほしいのです。

その「元気」は、本物ですか? それとも、「元気なふり」ですか?


ふりをするのには、エネルギーがいる

元気なふりをするのは、実はとても疲れることです。

本当は不安なのに、不安じゃないふりをする。 本当はしんどいのに、しんどくないふりをする。 本当は休みたいのに、まだまだやれるふりをする。

これ、ものすごくエネルギーを使うんです。

自分の本当の状態と、外に見せている状態。 このギャップを埋め続けるために、知らないうちにエネルギーが漏れていく。

元気なふりをすればするほど、本当の元気が削られていく。

そういう逆説が、あるんじゃないかと思うのです。


無理なポジティブが奪っていくもの

「ポジティブでいよう」 「前向きに考えよう」

そういう言葉は、世の中にたくさんあります。

もちろん、前向きな姿勢は大切です。 でも、それが「無理なポジティブ」になっているとき、何かが奪われていきます。

まず、自分の本当の感情が見えなくなる。

「落ち込んじゃだめだ」と思っているうちに、落ち込んでいることすら自覚できなくなる。 「不安になっちゃだめだ」と思っているうちに、不安のサインを見逃すようになる。

次に、体が発するサインにも鈍くなる。

疲れているのに、疲れていないと思い込む。 限界が近いのに、まだ大丈夫だと信じ込む。

そして気づいたときには、心も体も、悲鳴を上げている。


「元気じゃない自分」を許す

元気なふりをしてしまうのは、元気じゃない自分を許せないからかもしれません。

「経営者なのに、こんなことで弱っていてはだめだ」 「みんな頑張っているのに、自分だけ弱音を吐くわけにはいかない」 「弱いところを見せたら、信頼を失うかもしれない」

そうやって、自分で自分を追い込んでいく。

でも、元気じゃないときがあるのは、当たり前のことです。

人間なんですから。

不安なときもある。しんどいときもある。休みたいときもある。

それを認めることは、弱さじゃない。 むしろ、自分を守るための強さなんじゃないかと思います。


本当の元気とは

私は、本当の元気とは、テンションが高いことでも、常にポジティブでいることでもないと思っています。

本当の元気とは、自分の内側から、静かに、でも確かに湧いてくる生命力のようなもの。

「明日も生きていこう」と自然に思える状態。

そのためには、無理なポジティブを手放す必要があるのかもしれません。

元気じゃないときに、元気じゃないと認める。 しんどいときに、しんどいと言える。 休みたいときに、休む。

そういう「許し」が、本当の元気につながっていくんじゃないかと思うのです。


問いを置いておきます

最後に、いくつかの問いを置いておきます。

「その元気は、本物ですか?」

「元気なふりをすることで、何を守ろうとしていますか?」

「元気じゃない自分を、自分で許せていますか?」

答えを出す必要はありません。 ただ、少しだけ立ち止まって、感じてみてください。


この記事が、何かを感じるきっかけになれば嬉しいです。